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ハイエンドヘッドホンと、デジタルオーディオの可能性を追求し続ける「だおさん」の紆余曲折blog。週1回(日曜日)or不定期更新。
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esw10.jpg    0724_cd900st.jpg

今回の比較企画は、オーディオテクニカEar Suit最上位モデルで
限定販売となったATH-ESW10JPN。
ハウジングに越前漆を使っているのが大きな特徴だ。

以前ESW9との比較を行ったが、
今回はこのサイトのスタンダードであるCD900STとの比較を行う。
ポータブル機では必然的に限られるハウジングスペースやドライバサイズの中で
ハイエンド機に劣らない音質を再現した、数少ないモデルではないだろうか。

まもなくedition8という、ポータブル機では最高水準のモデルが発売されるが、
デザイン性や持ち運ぶという機能性を考えれば
ESW10JPNも高い人気を維持し続けるだろう。

esw10jpn.jpg
(図の凡例については、下記記事参照のこと。
 http://puredigital.blog.shinobi.jp/Entry/26/


1.音質傾向

グラフ上ではドンシャリのように見えるが、
あくまでCD900STとの比較であり、CD900STは中音域がしっかり出ている機種なので
絶対的なバランスはまあまあ良いといえる。

ただ、厳密な話をすれば、高音・低音の量の割に
やや中音域、音色の厚みが足りないように思える。
空間・解像は相対的には悪くはないのだが
コストパフォーマンスには見合っていないように感じる。

ただし、あの小さなドライバ・ハウジングでここまで再現できるのは
特筆すべき点ではある。


2.楽器特質

基本的にはどのジャンルにおいてもCD900STを上回っている。
特筆すべきは、ボーカルの良さ。
再現度が高く、艶があって響きが突き抜けるような爽快感がある。
人の声を表現する能力は、他のハイエンドヘッドホンと比べても
遜色ない見事な再生をしてくれる。

逆に弦楽器の表現はあまり上手ではない。
音がダマになりがちで、モコモコしていて繊細さがない。
金管楽器や打ち込みではスピード感ある音を出せるのだが、
弦楽器では極端に音の立ち上がりが悪いように思える。不思議だ。


3.装着感の悪さ

イヤパッドの密着度が高いため、
側圧と、外気温が高い場合の蒸れが気になるところ。
ただし、押し付けられるような不快感はない。
蒸れさえ気にならなければ長時間使用が可能なデザインだ。

頭頂への圧力、重量感はほどんど感じない。
また、タッチノイズも目立たないので
ポータブル用途としては合格といえるだろう。


4.機構の悪さ

基本的に機構の悪さは感じない。
機能的にも優れたデザインのヘッドホンといえる。
可動部が頑丈にできており、むしろ少し硬いくらいだ。

漆を使っているが、剛性は保たれており、
多少の衝撃で傷がつくことはない。
(ただし、購入直後は漆が完全に乾燥していないため
 傷つきやすかったという報告もあったが…)
漆ハウジングで気になるのは、指紋や油脂汚れが目立つくらいだが
手入れをすれば問題ない。


ESW10について言えることは、
以前のESW9との比較の時に詳細に語っているのでそちらを参考にしてほしい。
購入から半年ほど過ぎたが、当初言われていたよりも頑丈なことに驚く。
わりと苛烈な環境にさらしていたが、今のところ目立つ傷は一つもない。
購入直後はそれなりに大事に扱っていたのがよかったのだろうか。

ESW9でも十分完成されたヘッドホンだっただけに、
デザインとしては非常に洗練されている。
ポータブルヘッドホンとしての一つの完成形があるのではないだろうか。

肝心の音についても、値段が値段だけに、
端正整ったバランスの良い音づくりを目指したように見える。
このヘッドホン1つで色々な音楽を聴きたいという人には便利な機種だろう。
逆に、このヘッドホンに何か個性を求めているヘッドホンコレクターにとって
音質はボーカルが良い以外に突出した良さがなく、
ESW9の時のような強い個性がないのが個人的には非常に残念。
以前も述べたような気がするが、私はそういった意味で
音の好みでいえばESW10よりもESW9のほうが好きだ。

限定モデルとのことで、もうそろそろ購入しにくくなると思うので
迷っている人はもう時間は残されていないと思っていいだろう。
しかし、私だおさんとしては漆デザインでなければ駄目だ、という人以外は
ESW9のほうがコストパフォーマンス的にも、ヘッドホンの醍醐味的にも
お勧めしたい、といっておこう。

ヘッドホンに対する音の感じ方は人それぞれだが、
価格が高い、が必ずしも満足感が得られるとは限らないということを教えてくれた
機種の一つである。


(購入したことを後悔しているわけではない。…念のため。)
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無題
レビューお疲れ様です。
低音・高音のわりに中音の厚みが足りないのは、
まるでデノンのDシリーズのようですね。

D7000含め、最近の国産高級ヘッドホンは
クールで細身・硬めの音調のものが多いような
気がします。

高級機種で、中音が厚め、温かみのある音の
ヘッドホンはビクターのDX1000・700ぐらいしか
ないんじゃないでしょうか。
plto 2009/04/20(Mon)02:04:55 編集
Re:無題
pltoさん
コメント、ありがとうございます!

DENONのDシリーズは評判がいいみたいですが、
個人的に決定打となるようなモノが感じられず、未だ購入保留にしてます…。

音に関しては、そう言われてみれば日本製のハイエンドは
迫力や厚みよりも、高繊細に傾向が向いているように思いますね。
(STAXしかり、SA5000、W5000しかり…)
確かに、ヘッドホンといえばスピーカーにはできない緻密な音の再現力が魅力で
往々にしてヘッドホンユーザでそういう音を好む人も多い気もします。

中音域を豊かにすると、確かに繊細さが犠牲になるのはなんとなくわかります。
でも、中音を豊かにした上で絶妙なバランスを作り上げてるヘッドホンは
pltoさんの言うとおりDX1000と、これも私が偏見で大好きなESW9が
相当するかなと思います。
【2009/04/27 21:34】
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