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ハイエンドヘッドホンと、デジタルオーディオの可能性を追求し続ける「だおさん」の紆余曲折blog。週1回(日曜日)or不定期更新。
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以前、STAXのSR-404と4070を比較する企画を行ったが、
今回はaudio-technicaのハイエンドポータブルヘッドホンである
ATH-ESW9とATH-ESW10JPNを相対比較したいと思う。

発売から1年しか差がないこと、外見がほとんど同じということで
「どちらも同じ音なのではないか」と思っている人もいるのではないだろうか。
しかしその実、この両機種には音質に大きな差があるのだ。

ESW10JPNは限定販売となっており
まだ販売している店は多いが、過去の実績からいっても
まだ購入を決めかねている人はそろそろ決断した方がいいかもしれない。
かなりの長文レビューとなっているが、
そういった方々への参考資料になれば幸いである。

今回も絶対評価ではなく、
あくまでESW9とESW10との相対的な比較でレビューを行う。
レビューで使用する機材は、ポータブル機種ではなく、
ハイエンドで使用している機材を使用している。
音源については基本はCD900STとの比較レビューとほぼ同様。


<評価ダイジェスト>
1.高音域 ESW9 < ESW10
2.中音域 ESW9 > ESW10
3.低音域 ESW9 > ESW10
4.空間表現 ESW9 ≦ ESW10
5.解像度 ESW9 < ESW10
6.管楽器の表現 ESW9 ≦ ESW10
7.弦楽器の表現 ESW9 ≧ ESW10
8.打楽器の表現 ESW9 > ESW10
9.打ち込み系の表現 ESW9 > ESW10
10.女声の表現 ESW9 ≪ ESW10 
11.男声の表現 ESW9 < ESW10
12.側圧の強さ ESW9 ≧ ESW10
13.頭頂圧 ESW9 = ESW10
14.蒸れやすさ ESW9 ≧ ESW10
15.重量感 ESW9 = ESW10
16.タッチノイズ ESW9 = ESW10
17.コード癖のつきやすさ ESW9 = ESW10
18.装着調節の難しさ ESW9 < ESW10
19.機構の弱さ ESW9 ≧ ESW10
20.機器の弱さ ESW9 < ESW10
21.汚れ目立ち ESW9 < ESW10
22.音漏れのしやすさ ESW9 ≦ ESW10

<総評>
かなり大雑把に言うと、ESW10JPNは万能機種、
ESW9は局所的に長所を発揮する個性のある機種といえる。
ピアノのソロ曲、オーケストラや打ち込み系などで
肉厚なサウンドを楽しめるのはESW9の大きな特徴。
ESW10JPNはボーカルが圧倒的に巧い以外は
総じて高い性能を発揮しているものの、個性は低く、
音楽としての楽しさは高くない。
音楽ではなく、「音」を追及しているユーザには好まれるだろう。

また、漆を使っているESW10は、
扱いはESW9よりもデリケートになる。
逆にESW9はある程度荒っぽい扱いでも頑丈だ。

個人の独断と偏見を述べれば、
ヘッドホンの好みとしてはESW9の方が上。
比較には3時間ほど時間を使ったが、
気づけば記事まとめなどの手隙の時間はESW9のほうを使ってしまう。
ESW10は良バランスの音質でスピード感もあり優秀な音質だが
ESW9に比べてどうしても音が硬質、痩せて聴こえてしまう。

ESWシリーズを購入する人でコストパフォーマンスを気にする人は
あまりいない気もするが、ESW10は価格の割には個性が弱く、
使い分けするヘッドホンユーザには向かない機種に思う。


以下、各項目ごとの評価。

1.高音域   ESW9 < ESW10
  高音域はESW10が一回り高い音域が明瞭に出ている。
  両機種の音質を決定づける要因の一つといえるだろう。
  聴く音楽と聴く人の好みにもよるが、
  シンバル等金物の音や打ち込み系では
  ESW10の高音域が過剰供給に聴こえるときがある。

2.中音域  ESW9 > ESW10
  豊かな中音という意味ではESW9が勝っている。
  ヘッドホン全体から見てもESW9の中音域の豊満さは優れているため
  特にクラシックでは肉厚なサウンドが楽しめる。
  ESW10がドンシャリというわけではなく、
  煌びやかな高音の陰に隠れやすいため、
  中音域は比較的控え目に聴こえる。

3.低音域  ESW9 > ESW10
  量でいえばESW9、質でいえばESW10。
  ESW10は切れ味が鋭く、スピード感のある低音が鳴り、
  全体的に上品、きれいさっぱりという印象だ。
  ESW9は、悪く言えば横に膨らんだ、締まりのない低音だが
  迫力と重量感があり、打ち込み系やロックなどでは
  十分なパフォーマンスを得ることができる。

4.空間表現  ESW9 ≦ ESW10
  どちらもハイエンドヘッドホンから比較すると音が近い方なのだが、
  どちらかといわれれば、ESW9のほうが音が近く平面的で、
  ESW10のほうは音がやや遠くから聴こえ、距離感もつかめる。
  ESW9はその独特な中音域が透明感をやや削いでいるため
  高音が澄んでいるESW10が勝って聴こえてしまう。
  また、ESW10のほうがイヤパッドの厚みがあるため
  物理的にも音が遠くなるのかもしれない。

5.解像度  ESW9 < ESW10
  価格ほどの差とは言わないが、大きな差が感じられる。
  前述のとおり、ESW9は中音域が豊かな分、透明度がやや落ちるので
  ESW10のほうが細かい音や隠れた音を拾いやすい。
  ただ、ポータブル用途ではESW9でも十分な解像度なので
  コストパフォーマンスを考えればESW10はやや割に合わないか。

6.管楽器の表現  ESW9 ≦ ESW10
  優劣をつけるのはなかなか難しいが、
  全体的な表現力でいえばESW10のほうか。
  音の抜けの良さや煌びやかさ、躍動感のある曲でいえばESW10、
  音の温かさや丸み、落ち着いた曲はESW9のほうが良い音に聴こえる。
  楽器単独の音のリアルさならESW10のほうが優れていて
  ESW9はやや雲がかっている。

7.弦楽器の表現  ESW9 ≧ ESW10
  こちらも、優劣というより好みの問題となりそうだ。
  ストリングス全体の音の調和、豊かさや厚みはESW9が優れている。
  ESW10の場合、ストリングスを聴くと全体の響きというより
  複数の弦楽器が一斉に奏でているという聴こえ方。
  良く言えば解像度が高いのだが悪く言えば音楽的ではない。
  ただしソロバイオリンやアコースティックギターなど
  単独の音ならESW10の方が優れている。

8.打楽器の表現  ESW9 > ESW10
  低音の量がでるだけ、ESW9のほうが迫力がある。
  ESW10については、ソースにもよるがシンバルなどが
  過剰に前に出ることがあるためややバランスを崩しているか。
  また、ESW9のピアノの音はedition9やSR-007Aといった
  ハイエンド機種でも達成できない
  豊かな倍音を感じる魅力のある音であるが
  ESW10では同様の音は鳴らず、平均的なピアノの音。
  (ややシャリついた感じにも聞こえる)
  ピアノソロの曲ならば、圧倒的にESW9が優れている。

9.打ち込み系の表現  ESW9 > ESW10
  好みの問題というところもあるが、
  低音の量が出るという点でESW9のほうが量感があり、
  聴いていて楽しいのもESW9のほうだろう。
  引き締まったキック音や鋭いシンセ音のほうが好きだという人、
  量感よりスピード感が好みならばESW10のほうが良いかもしれない。

10.女声の表現  ESW9 ≪ ESW10
  ESW10の女声の表現は、他のハイエンドヘッドホンと比較しても
  奇跡的といえる次元で高い表現力を持っている。
  どのジャンルの女性ボーカル(あるいは中性的な男性ボーカル)でも
  芯が通ってボーカルが前面に浮き出てくる。
  ESW9は平均的。高音が弱いため艶が足りない。

11.男声の表現  ESW9 < ESW10
  女声ほど圧倒的な差はないものの、
  ESW10はそもそもボーカルの表現力が優れている。
  限りなく実際の肉声に近い良い音質バランスなので
  違和感なくボーカルが聴くことができる。
  逆に楽器に調和するようなテノール歌手のソロは
  ESW9のほうが音が溶け込んでいて音楽的には良い。

12.側圧の強さ  ESW9 ≧ ESW10
  ほとんど差はないが、
  ESW10のほうがイヤパッドの厚みがあり、
  密着度がやや弱いため側圧は弱く感じる。
  ESW9、ESW10とも多少の動作でずれることはないため
  装着感としては優秀だ。

13.頭頂圧  ESW9 = ESW10
  どちらも頭頂圧はほとんど感じない、優秀な装着感。
  ESW10のほうがヘッドバンドのクッションが厚くなっているものの、
  ESW9のクッションで十分重量を分散出来ている。

14.蒸れやすさ  ESW9 ≧ ESW10
  どちらも肌になじみやすい
  天然皮革(ラムスキン)を使用しているため
  どちらの機種も夏場の使用はややつらい。
  ESW10はやや密着感が弱いため
  比較的、という観点なら蒸れにくいといえる。

15.重量感  ESW9 = ESW10
  実重量も同じ(170g)で、
  装着感的にも重さはほとんど感じない。
  他のヘッドホンに比べても優れた装着感といえるだろう。

16.タッチノイズ  ESW9 = ESW10
  どちらもハウジングにあまり伝播しない。
  使用時に動きを伴うポータブルヘッドホンとしては優秀。

17.コード癖のつきやすさ  ESW9 = ESW10
  どちらも癖やねじれがつきにくく、
  持ち運びを前提としたポータブルヘッドホンとしては優秀。
  内部の素材は違うかもしれないが、
  両機種とも見た目、感触は全く同じだ。

18.装着調節の難しさ  ESW9 < ESW10
  どちらも装着しやすいのだが、
  ESW10はヘッドバンドやハウジング回転がやや硬い。
  ESW9でも十分しっかりした装着感なので
  ややESW10の機構は過剰か。

19.機構の弱さ  ESW9 ≧ ESW10
  どちらも造りはしっかりしている。
  ESW10に比べて、ESW9は可動部が緩く感じるものの、
  壊れやすくは感じない。

20.機器の弱さ  ESW9 < ESW10
  ドライバー部は両機種ともしっかり保護されているので
  特に問題はない。
  ハウジングについては、苛烈な環境で1年間使用し続けた
  ESW9はほぼ無傷という頑丈さ。
  購入から2か月のESW10もまだ傷こそないもの、
  漆ハウジングは傷つきやすいとのことで扱いは丁寧にする必要がある。

21.汚れ目立ち  ESW9 < ESW10
  漆特有の光沢があるESW10は、指紋の汚れが目立つ。
  ESW9は基本的に汚れが目立ちにくく、指紋等は目立たない。

22.音漏れのしやすさ  ESW9 ≦ ESW10
  一定の音量までなら、どちらの機種も音漏れはしないが
  ある程度の音量を超えると、どちらも音が漏れるので注意が必要。
  目安としては、音楽を聴きながら、なんらかの外の音
  (テレビ音声や車内放送)が聴こえない音量なら
  音漏れをしている可能性が高い。
  微々たる差だが、ESW10のほうが音漏れし始める音量が近い。

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勉強になります
はじめまして(^-^)

いつも拝見させていただいている者です
オーディオ関連に興味を持ち高級イヤホンやハイエンドヘッドホンを購入するようになってから約二年…自分もまだまだ日々勉強不足を痛感してるところですがそんな私にこちらの記事はとても参考になります

先月、約一年間愛用していた10 PROが断線してしまったのでESW10を購入しました。
ESW9かESW10どちらか迷いましたがこちらの記事を参考にESW10を購入しました。
10 PROのスペアケーブルはなんかもう入手困難らしいのでこれからはESW10を主力にしていこうと思います

何はともあれどうぞこれからよろしくお願いします
2009/01/19(Mon)01:13:31 編集
Re:勉強になります
蒼さん
コメント、ありがとうございます!

記事を参考にしていただき、ありがとうございます。
私も音を聴いて感じるまではいいものの、それを文字にするのには
まだまだ悪戦苦闘、未熟とは思っています。
温かい目で見守っていただければ幸いです。

ESW10は世間的には評価が高いので、
このサイトでは敢えて辛口にしていたのですが、
(個人的にもESW9のほうが好きなので…)
ESW10を選びましたか。もちろん、悪いヘッドホンではないし、
一応、限定品なので手に入るうちに買っておくべきだとは思います。
ぜひ末永く大切に…。
【2009/01/26 21:19】
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2016/11/25 - あっという間に時が流れ、このblogも開設から10年目。2016年はその締めくくりをしたく思っています。2000年代後半にハイエンドの虜になった、一人のマニアの軌跡です。

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