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ハイエンドヘッドホンと、デジタルオーディオの可能性を追求し続ける「だおさん」の紆余曲折blog。週1回(日曜日)or不定期更新。
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blog記事やコメントなどで何度か述べたことがあるが、
私はアマチュアのトロンボーン奏者でもある。
大学時代は学生オーケストラの指揮も担当したことがあった。

ヘッドホンに対するよりよい音への追及というのは、
演奏者としても目指していた美しい音へのこだわりに近い。
必然的に、私自身がもつ理想の音、つまり
管弦楽曲なら、実際に私が直面していた音を目指す。

ヘッドホンについて評価をする皆さんの中に
よく「原音忠実」という単語を好んで用いる方がいるが、
その言葉を使う時、「原音」にしっかり向き合っているか思い出してほしい。

そもそも、「理想の音」とは原音忠実なのか?それは違う。
理想の音は、あくまで皆さんの耳にしかないのだ。

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大学を卒業してから、約3年ぶりにオーケストラの舞台に立つ機会に恵まれた。
客席で聴く音とステージ上の音は反響の関係上、かなりの差異があるものの、
実際に直面する楽器の音を直に感じることができた。
ヘッドホンばかりを聴いていると、本物の音がどうだったかを見失いがちになる。
秋の演奏会シーズンはすでに過ぎつつはあるものの、
演奏者になれとは言わないが、オーケストラの生の音は
ヘッドホンの音を聴き分ける上でも、ぜひ覚えておくべきだろう。

しかし、ここでひとつ述べておきたいのは、
良いヘッドホンの音が生のオーケストラの音と等しいというわけではない。
むしろ、かなりかけ離れている。

あくまで独断と偏見の意見だが、
ヘッドホンというのはありのままの音を再現する機材ではなく、
必要以上に細かい音を出す、「眼鏡」のような存在だ。
ヘッドホンの用途のひとつは、モニタスピーカーで聞き取りにくい
些細なノイズのチェックや微妙な音調整に用いられる、ということは
皆さんもよくご存じのことだろう。

実際にコンサートホールで演奏を聴くと、
ヘッドホンの音を理想とする人にとってはこう思うのではないだろうか。
「温かみや滑らかさはあるが、音がぼやけている」
これは至極まっとうな感想だが、的は外れている。
原音忠実、ということを言うならば、その音が原音忠実なのだ。
ヘッドホンで聴くクラシックは、実際のコンサートホールに比べて
音のエッジが強すぎるのだ。
コンサートホールの音ではなく、リハーサルルームの音に近い。

CDなりSACDなりで聴くサウンドを、
「コンサートホールで聴く音に近づける」には、
ヘッドホンだと音が近すぎるし、像がはっきりしすぎている。
ここでいう原音に忠実にするには、
空気を振動・共鳴させることのできるスピーカーシステムが適しているという
結論に結び付いてしまうのだ。

ヘッドホンとスピーカーの優劣比較はナンセンスであることは承知の上だが
コンサートホールで感じることのできる「原音忠実」で
ヘッドホンが勝ることはないのだ。


さて、では、ヘッドホンにおいて何が理想の音なのか。
最初の話に戻れば、私は実際に直面した音を目指している、と述べた。
それは、コンサートホールの客席で聴く音ではなく、
演奏者として(かつては指揮者として)、ダイレクトに届く楽器そのものの音色を
目指しているといえる。だから、私はヘッドホンで理想の音を目指しているのだろう。
単にコンサート好きの聴衆であったのなら、また別の音の理想形があったと思う。


「理想の音」という命題は非常に議論のできる部分だろう。
しかし、これは議論こそできても結論にたどり着くことはない。
あるとすれば、自分自身の耳に答がある。それは十人十色だ。
今後も、このblogを通じて、私自身の持つ「理想の音」論は
ダラダラと語り続けていきたいと思う。
今この記事を読んでいるヘッドホンを愛する皆さんも
どんな音を聞きたいのかということを、腰を据えて分析してみるのも
趣味として、より面白いものになるのではないだろうか。
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コメント
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いいこと言われますね
いいこと言われていますねぇ。
私も現役のフルート奏者で一応ブラスで指揮もこなしています。
そうなんですよね何処まで行っても作られた音なんですよね。
それを理解しているとまた違って楽しみができるんですよね。
私の師匠が一度言われたことがあります。
僕は最高の何千万というスピーカーでライブで聴いているから家に高いスピーカーやヘッドフォンはいらない・・・。
現役のオケ奏者だからいえる言葉ですがこれにすべてが集約されていると思います。

最後にいつも楽しく拝見しております。
またいつも参考にさせていただいております。
今後ともレビュー等楽しみにしています。

もしよければメール等いただけたらうれしいです。ではでは
あきぷ~ 2008/11/23(Sun)22:54:59 編集
Re:いいこと言われますね
あきぷ~さん
コメント、ありがとうございます!

私が楽器をやっていて教えられたのは、
演奏する楽器だけが楽器ではなく、その場の空気や物質、
ホールそのものも楽器だから、それを考えなくてはいけない、と。
楽器奏者的には音の反響やホールの特質を加味した音づくりをすべき
という話ですが…
(楽器の音色はきれいなのにホールでは音が響かない
 「そば鳴り奏者」とは、それが出来ていない人のことです)

これを趣味音響に当てはめれば、スピーカーやヘッドホン、
上流機種(プレイヤーやアンプ、DAC)だけのことを考えているだけでは
本物の音は作り出せない、空気まで演出してこそ
より本物の音になる、ということです。
「ホールで聴くような原音忠実」を目指すなら、という前提条件込みで。

でも、ヘッドホンやスピーカーの音が駄目なものというわけではなく、
ヘッドホンとして、スピーカーとして面白い音というのもあります。
今回の記事で訴えたかったのは、そういう「理想の音」でした。
得てしてスピーカーはリアルに近づけようとしますが、
ヘッドホンはそうではないと私は信じているし、
そう思っているからこそ面白い世界だなと感じているのでしょう。
【2008/11/24 09:59】
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