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ハイエンドヘッドホンと、デジタルオーディオの可能性を追求し続ける「だおさん」の紆余曲折blog。週1回(日曜日)or不定期更新。
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110710a.jpg

前回に続き、7月2日と3日に札幌チサンホテルで開催された
「第23回高級オーディオ試聴会」より、
メインイベントとなった
オーディオ評論家、傅 信幸(ふう のぶゆき)氏の講演より、
私が参加した土曜日のほうの内容をレポートします。

オーディオ機器の講演会というものは初体験で、
どんなことを話されるのか期待していましたが、
その内容はスピーカーとかシステムといった
こじんまりとした話ではなく、
ヘッドホンを含む全てのオーディオに通じる
オーディオ作法的なお話でした。

110710b.jpg

当日の会場は、なかなかの盛況ぶりでした。
私が着席した座席は会場の中央あたりで、
これくらいの人数がさらに後ろにもいる状態でした。
ヘッドホン祭に比べると、やはり年配の方が多いですが、
北海道でもオーディオ熱はちゃんとあるんだなと安心しました。
住環境的には、もしかすると首都圏よりも
恵まれたオーディオ環境を持っている人が多いかもしれません。

110703c.jpg

講演に使われたのは、
前回でも紹介したタンノイのKINGDOM ROYAL。
ただ、これはあくまで音源のリファレンスがメインで
KINGDOM ROYALそのものの製品を紹介は、
あくまで参考程度に、という感じでした。

かいつまんで紹介すると、
タンノイはエジンバラに工場を持ち、
現在社員が150人程度の小さな会社ですが
創業は1926年と、オーディオ界隈では老舗中の老舗です。
現在は、家庭用(といっても、日本では限定的な家庭用ですが)と
ホールやクラブなどで使われる業務用と
ほぼ半々の割合で生産しているそうです。

タンノイは、その大型の筐体によって、
本体そのものに音響効果があり、
空間そのものの音響効果が多少悪くても
上手に表現してくれることが多いようです。

しかし、KINGDOM ROLAYは120kgという超重量に加え、
筐体は非常に硬い素材が使われているため、メリハリがある分、
本体そのものの響きはないので、
設置する空間には、適切な音響効果を考慮する必要がありそうです。
(ここが、スピーカーシステムの難しさがあると思います)

その事を実証するために使われたのは、次の2枚の音源。

ヴァーツラフ・ノイマン指揮、チェコフィルハーモニー管弦楽団
ドヴォルザークホール収録 ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」
デノン(日本コロムビア)版、1993年12月録音
エクストン(オクタヴィア・レコード)版 1995年1月録音

同じ指揮者で、同じホールで、同じ楽団で、同じ曲を、
ほぼ同じ時期に録音されたもので、違うのはエンジニア側。

デノン版は吊りマイク、指揮者後方4mに1本、左右チャンネル用の補助マイク2本の
4本で構成されており、ホールの響きを含めた録音となっていました。
対してエクストン版は22本のマルチチャンネルで録音され、
すべてステージ上に配置されていたそうです。
また、エクストン版はプロデューサーが元トランペット奏者ということもあり
楽器個々の音を活かすような音の作りをしていました。

これはどちらが良いかという話ではなく、
どちらが好みか、
あるいは自分の持つシステムにどちらが適しているか、という話になります。
今回のKINGDOM ROYALの場合、先に述べた通りスピーカー自体に響きはないので
空間を含めた録音をされたデノン版のほうが、良い効果がでそうです。
ヘッドホンでも、同じように空間まで捉えて録音されていたほうが
聴いていて自然でしょうね。
(私は、その場ではエクソトン版のほうが好きでしたが…。)


KINGDOM ROYALに絡んだ話はここまでで、
以後はリスニングに適した音源の紹介と、
それを実際にKINGDOM ROYALで試聴するという形でした。

講演では配布資料として34枚のCD/SACDリストが配られましたが、
実際に音を聴いたのは以下の音源です。
どれも高級機での再生に優れた、味わい深い音源でした。

キャサリンジェンキンス「ビリーヴ」  
サラブライトマンの後継とも言われている、クラシック出身のポップス歌手です。

トミー・エマニュエル「ENDLESS ROAD」  
アコースティックギターでは非常に有名な盤だそうです。
ヘッドホンは総じてアコースティックギターの表現が上手なので
ヘッドホンでも是非聴いてみたいですね。

上原ひろみ「ヴォイス」  
ジャズピアノ曲ですが、
ベースがウッドベースではなくエレキベースを使っていたりと
現代風なテイストを感じます。

エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮 
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団
チャイコフスキー交響曲第4番、第5番、第6番

レニングラード・フィルは世界一音の大きいオケとのことです。
再生にはSACD盤が使われました。
50年前の録音も、SACDであれば年代を感じさせない
ライブ感溢れるサウンドが聴けました。

カール・ベーム指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
ブラームス交響曲第1番(SACD)
 
1959年録音。当時最高の技術者が集結して録音された音源で、
教会で録音されたそうです。
このSACD盤は今月20日から限定販売され、
計画プレス数は3000枚とのことですが、
非常に有名な盤らしく、かなり予約は埋まっているそうです。


試聴音源のひととなりを知りつつ、
最高の音響で最高の演奏を聴くという
オーディオの醍醐味を濃縮した講演でした。
また、この手の試聴機では堅苦しいジャズやクラシックが多いですが、
かなり新しいアーティストや、耳触りのよいポップスを選曲するあたり、
正統ではないものの、
かえって新鮮で興味深い内容だったように思います。

演奏者はともかくとして、
なかなかリファレンスに適した、
良録音の音源というものは探すのが大変です。
私の実体験でも、
CD10枚買って1枚当たりがあればいいほうといったところでしょうか。
それを探し当てるという楽しみもありますが、
「これはリファレンスにできる」というお墨付きがあって
それを基準に音の良し悪しを判断したり、
自分の耳を鍛えることができるのではないかと思います。

そういう意味では、今回の傅氏の講演は
単に高級スピーカーに限った話ではなく、
オーディオという大きな枠組みで、
独特の切り口から愉しみ方を発見できるという
非常に有意義な内容だったと思います。

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傅 信幸さんのこと
傅 信幸さんの詳しい講演内容、有難うございました。実は私、傅さんのファンでして、インターナショナル・オーディオショウでは、もっぱら傅さんのプレゼンをハシゴしています。それと私の使用しているスピーカーはタンノイのGRFメモリーで、大変参考になりました。
ま~さん 2011/09/14(Wed)12:57:47 編集
Re:傅 信幸さんのこと
ま~さん
コメント、ありがとうございます!

傅さんは、このオーディオショーの講演を聴く前まで
どのような方かは知らなかったのですが、
(書籍等も特に出されていないようですね)
非常に話は聞きやすく、また、オーディオ評論にありがちな
理系や数値理論に傾倒せず、
聴いた音、感じた音に対する、わかりやすいコメントなので
オーディオマニアじゃなくても、むしろ
オーディオを良く知らない人にとって、
「なるほど、オーディオってこんな世界なんだ」ということを
体系立ててお話しできる数少ない人ではないかと感じました。

会場では、傅さんオリジナルのSACDも販売されていたのですが
SACDプレイヤーが無いので聴けないのが残念…
今後の為に、SACDだけは買っておけばよかったかなと、
ちょっと後悔しています…。
【2011/09/25 21:13】
重さと発熱
下の自分のコメント、何か日本語が変ですね…。
スピーカーでハイエンドオーディオシステムを組むと、重量が洒落になりませんが
(全て含めると半トンぐらいいきそうな予感)
ヘッドホンによるシステムは軽くて良いですよね。
BLO-0299 Auditoriumを中心としたシステムだと、
トランスポートのノートPCを加えても10kgにさえ満たないでしょう。
どこかへ出かけるときも、気軽に一式持って行けそうです。

重量といえば、強化電源BLO-0160EW。BLO-0299よりも一回り小さいのですが
重さが同じ(1.1kg)で、ずっしりとした重みがあります。
BLO-0299に積み上げようかと思ったんですが、BLO-0299の天板を傷つけそうなので
止めました。木の外装の足部分に出っ張りがあるんですよ。横に並べて使ってます。
BLO-0160EWはBLO-0169EW(BLO-0299の下位モデル)との組み合わせなら
ガチッと噛み合って積み上げられるようになってるみたいです。

強化電源は発熱を心配してたんですが、ほとんど熱を出しませんね。
アンプの方は元々がACアダプター駆動なので、やはりほとんど発熱しません。
DACのCARAT-SAPPHIREの方が数段熱くなるというw
このDAC、オペアンプのせいなのか、基盤の密度が高いせいか
DACオンリーなのに結構熱くなるんですよね。

だおさんが使用されてる、「Balanced Home Amp」はどうなんでしょう。
DAC+アンプとなると、結構な熱を出しそうですが。
でも、固体が大きいので、その辺もしっかり対策されてそうですね。
plto 2011/07/14(Thu)13:05:18 編集
Re:重さと発熱
pltoさん
コメントありがとうございます!

私の場合、いまでこそ札幌に居ますが
昔は各所への出張が多かったので、いつでもどこでも聴けるようにと
小型のシステム、かつPCオーディオでノートでもデスクトップでも
同じ品質が保てることを目指してました。
今となっては、ちょっと動かすのも億劫な
大きなシステムになってしまいましたが(苦笑。

強化電源やクリーン電源は、
内部にずっしりとしたコンデンサ積んでますからね…
私が使っているPowerPlantPremierも20kgあります…

夏の暑さと機器の持つ熱はオーディオの大敵とはいいますが、
ヘッドホン関係はそもそもそれほど電力使わないので
エコなうえに夏にも優しいです。

私の場合、強いて言えばSRM-007tAの真空管が
めちゃくちゃ熱いぐらいで(当然か)、他は全く発熱しません。
Balanced Home Ampも、筐体は大きいですが
中はかなり空間があるので、
(ディスコンになる前は、
 公式ページに内部の基盤画像があったのですが
 もうさすがにページ自体無いようです…)
長時間駆動しても本体はひんやりしてます。

PowerPlantPremierも、実は底面に
サーバーラック並みの巨大ファンが2基も搭載されてますが、
実際に動いたところを見たことが無いです…。
ヘッドホンアンプ程度の電力量では余裕の稼働でしょう。

あ、BLO-0299と160EWはスタッキングできないんですね…
てっきりできるものと思ってました。
ここはオプションパーツでも発売して、
今後のDACやDDCもスタックできるように考慮すれば
さらに儲けが…否、統一感が出ていいと思いますが…(何。
【2011/07/16 09:12】
無題
>ヘッドホン祭に比べると、やはり年配の方が多いですが、
ヘッドホン祭のレポだと、アップされてる画像・動画に出てるのは
大体20-30代の人ですからね。しかも、男ばかりという。

>KINGDOM ROLAYは120kgという超重量
何を使ったらそんな重量になるのかw 左右ステレオで重量級のプレーヤー、アンプも揃えたら床が抜けそう。
…個人が購入して業者にセットして貰ったあと、色々調整するとなると大変そう…。

>ヘッドホンでも、同じように空間まで捉えて録音されていたほうが
>聴いていて自然でしょうね。
頭内定位が基本のヘッドホンですが、音場の狭いヘッドホンでも
音源の空間表現の違いは表現してくれますからね。
オーケストラ関係は、ダイナミックレンジの関係もあって
ほとんどのヘッドホンでも、頭内定位が緩和されます。

オーディオ試聴会は体験したこともないのですが、レポートを見ていると面白そうですね。
機会があったら、行ってみたくなりました。
plto 2011/07/11(Mon)13:00:29 編集
Re:無題
pltoさん
コメント、ありがとうございます!

秋になると、各社新製品を出したり、
様々なオーディオショーが首都圏で一斉に実施されるので
一度覗いてみると面白いと思いますよ。
オーディオの良さもさることながら、営業担当の人も
ちょっとクセがある人が多くて、話していて面白いです(笑。

やっぱりオーディオは男のロマン、といったところなのでしょうかね…
基本男ですよね。
音楽が好きな女性はたくさんいますが、
音質に拘る女性ってあまり見かけません。
男が宝石にあまり興味が無いのと似たようなものでしょうか。
(逆に女性の宝石に対する執着心の原動力とは何なのか)

ヘッドホンは装着して終わりですけど、
スピーカーで最適な音場を作るには緻密なセッティングが重要です。
(セッティングだけで1冊の本になるくらいですから)
ヘッドホン以上に、買って、いざ家で聴いたら
「コレジャナイ」音になりやすいのではないでしょうか。

ヘッドホンで中途半端に音を知ってしまったからこそ、
スピーカーシステムの敷居の高さを実感してしまいます。
【2011/07/16 08:32】
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